「世の中をちょっと良くする」を模索する、

ふたりが考えるクリエイティビティ。

多摩美OBが活躍する「電通デジタル」を訪問!

阿部智史さん(左)と吉田圭さん(右)

総合デジタルファーム・電通デジタルに在籍し、コンサルティングや新規サービス提案に奔走する多摩美OB阿部智史さんと吉田圭さん。「社会をよりよくしたい」と口を揃えるふたりの対談を全4回で配信。在学時のエピソードから卒業後の進路、そして現在の仕事まで、それぞれの視点から美大生が獲得でき得るキャリアの広がりについて聞かせてくれた。


阿部智史(Satoshi Abe)

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報アートコースを卒業し、レコードショップに勤めたのち、デジタルの世界へ。電通デジタル入社後は、顧客基点によるマーケティングDXの推進業務に従事し、マーケティング戦略策定、組織変革支援などのコンサルティングから、システム導入、アプリ開発といった基盤・施策領域の実行まで、デジタルを活用したビジネス変革を幅広く支援。カスタマーサクセスをテーマに、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化するためのソリューション開発に尽力する。


吉田圭(Kei Yoshida)

多摩美術大学美術学部2部デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコース卒業。在学中よりプロダクションでWEBサイトのデザイン・設計・開発業務に従事。2014年より電通イーマーケティングワン(現電通デジタル)に合流し、サイト構築、プロモーション設計、コミュニケーション設計、顧客体験設計など、幅広い業界でプロジェクトの戦略立案、設計などに携わる。事業開発プロジェクトを得意とし、現在は家電ブランドの2030顧客接点の未来を構想するプロジェクトを推進中。



それぞれのテーマとふたりのクリエイティビティ考察。

阿部:僕は今、企業の課題をコンサルテーションして解決していくお仕事をしていますが、「売らないで、どうビジネスを成長させるか」というのを実はテーマとしているんです。

吉田:「売る」ことだけが企業成長ではない、と。

阿部:そうです。少子高齢化や経済の低迷など日本の市場は確実にシュリンクしていて、モノはどんどん売れなくなって行くわけです。そんな中で、新しいものばかりではなく、ずっと使い続けてもらうことを考えるとか、もっと好きになってもらうことを考えるとか。マーケティングや広告ではないカタチで生活者と企業の一助になるような仕事ができるのが、「電通デジタル」のいいところだとも思っています。

吉田:僕はデジタル以外の業界を検討しながら結局またデジタル業界に戻ってきたわけですが、ホームページやメールマーケティングなどのお仕事を経て、今は企業の新規事業をつくるというのを主に担当させてもらっています。新しいものとか、サービスとかもともと大好きでしたから、やりがいがありますね。

阿部:デジタルの世界、吉田さんにもめちゃめちゃフィットしているということですね。

吉田:僕、役に立っているかな?と思う瞬間は、サービスを考えた際に、おおよその外観を瞬時に描けることかな、と思っていて。こういう仕組みには何が必要で、そうなるとどんなリソースが必要とか。そういうのって、ホームページやWEBを設計してきた前職までの経験がとても活きていると感じています。

阿部:組織内でも最終のアウトプットイメージを瞬時に描ける人は希少かもしれません。

吉田:新しいモノをつくる時って、すでに「答え」があるものに向き合っていたら遅れてしまうと思っているんです。例えばオンラインショップでいえば、その一つの「答え」ってAmazonですよね。だから今からAmazonを真似しても勝ち目がない。特にコロナ禍以降はそのスピードが加速していると感じていて。

阿部:確かに。

吉田:昔はそのスピードがもっと緩やかだったので、模倣が通用していたと思うんです。けれど、世の中のスピードが変わったからには、事例があるところに向かってもダメだと考えています。そのときに、美大や予備校時代に身につけた「答え」がないモノに向き合って思考する姿勢がとても役に立っている。それと、「答え」が一つではないところに向かって考えること、僕はそれ自体がすごく好きみたいですね。

阿部:世の中に「答え」ってないですからね。たぶん、正解もないと思う。

吉田:コンサルの領域だと「答え」は求められませんか?

阿部:そうですね、めちゃくちゃ求められます。だから左脳的にロジックを整理して、どこから見ても非のないようにきちんと組み立てることをまずはやる。なんですけれど、それだけだと誰かほかの人が考えた時にも同じようなものが出来上がってしまう。要するに、正解だけをつくろうとすると、みんな同じところに行き着いてしまうんです。

吉田:「答え」や「正解」は、求められがちになりますからね。

阿部:だから僕はそこにちょっと右脳的な要素を加える。「美しい」ってどういうことだっけ?とか、人の心を動かすためには、何が必要なんだったっけ?とか。抽象的だけど、絶対“みんなの中にあるだろう”ということを考えて加えるようにしています。というか、美大の頃に鍛えられて、感覚的に自分の中に根付いているのかもしれません。

吉田:いわゆるコンサルティング的に考える方たちはロジカルに思考を積み上げていって、「正解」を求めることをされているように思います。けれど、そもそも「答え」が一つではないことはクリエイティブ的な前提ラインでもあると思う。例えば、最終形を決めてからロジックを組み立てるとか、両面性もあると思っています。

阿部:僕は「阿部の考えることってロジックだけじゃない。ちょっと柔らかいところとか、言語化しにくい気持ちの部分に取り組んでくれるところがいいな」と思ってもらえるようなことを価値として付け加えていける人でありたいと思っています。

吉田:だからこそ阿部さんは特殊なポジションになるんですよね。左脳だけで整理する人ではない価値を出せる人。

阿部:僕なんかがおこがましいのですが(笑)

吉田:「クリエイティブってなんだろう」と考えたときにも、やっぱり答えが一つじゃないことを見出すことが原点にあるのかな、と僕は思っていて。おそらくその「クリエイティブの良さ」みたいなものを言語化(説明)できないことなのかなと思います。

阿部:説明できない何か、というのはあるかもしれないですね。

吉田:そうですね。例えば「めちゃめちゃイケているコピーが、なんでイケてるのか。」というのって、ある一定のロジックは組み立てることができても、完全には解説できないかもしれないし、「再現性があるか」といえば、おそらく難しい。

阿部:クリエイティブなことって必ずしも表現とか意匠とかに限らなくて、そうではないものも僕はクリエイティブだなと思っているんです。


vol.1〜「紆余曲折。」はこちら

vol.2 〜「デジタルの世界へ。」はこちら

vol.4 〜 「最終回「世の中」のためになりたい。」はこちら