出品者 | 松岡友(2007年美術学部卒業) |
日程 | 2024年3月1日(金)~2024年3月13日(水) |
時間 | 12:00~20:00(水曜日は17:00まで) |
休廊日 | 木曜日 |
場所 | 新宿眼科画廊(スペースM、S、E) 東京都新宿区新宿5-18-11 |
WEB | 松岡友追悼展「不可視の存在の捉え方」 |
本展示は2021年3月6日に不慮の事故で他界した松岡友の追悼展示である。 松岡友は生前、美術作家として活動を行う上で、単に「美術作家」と名乗ったことはない。ある時は「魔術系オカルト美術作家」、ある時は「美術作家・霊媒師」という風に、そこに《 不可視の存在》への強い関心が常にあった。 松岡友は多摩美術大学の油画専攻で絵画表現を習得、卒業後務めた美術造形の会社で立体作品制作の技術も身につけた作家である。2010年に少女時代に親しんだRPGゲーム「 Final FantasyⅦ」から、更にファンタジーゲームのイメージ源である「西洋錬金術」「西洋魔術」的世界観を『黄金の夜明け』(江口之隆:著)、『世界シンボル辞典』(ジーン・C・クーパー著)などの文献も調べ、そこに個人的な解釈を加えた上で村上隆の「スーパーフラット」以降の現代アート作品として制作する事から本格的に作家活動を開始した。 またこの時期に実際に国内の西洋魔術実践者のイベントを訪れ面識を得た後、その元で儀式魔術の手解きも受け始めた。 その後、2012年には密閉された容器の中で覚醒と睡眠をコントロールする「フローティングタンク」の体験を得て、《「稲荷の神使の狐」の上に 美少年としての松岡友が乗る図像》(松岡友自身はこれを「 バモイドオキ神」後に「アセファル」とも呼んでいた)を感得した。 松岡友の関心は更に「西洋魔術」的な範疇を超え、作品の世界観も神道や民間信仰的イメージ、インドネシアの民間信仰のイメージ、密教的図像まで広まっていく。 関心の広まりと同時に、上座部仏教系の瞑想である「ヴィパサーナ瞑想」による1週間の無言行の体験、アーティストイン レジデンスで訪れた沖縄での琉球神道のシャーマンであるノロとの出会い、インドネシアのアーティスト イン レジデンスで地元のイスラームの精霊であるジン信仰との出会いetc. 文化人類学者がフィールドワークを行った上で論文を執筆するが如く、霊性を高める体験を重ねては制作を行なっていた。 今日、19世紀半ばに欧州で発生し19世紀末には世界的な影響となった「神霊主義」(心霊主義/Spiritualism)の人文知的方面からの再考が進んでいる。 この「神霊主義」とも関わる「《不可視の存在》という領域と美術の関係」は、西洋美術の正史という枠組みで鑑みても古くは「幻視者」の異名を持つ英国人作家ウィリアム・ブレイク(1757〜1827)や、19世紀の「象徴主義」の一角まで遡る事ができる。更に20世紀初頭にはシューレアリスムの偉大な詩人アンドレ・ブルトン(1896~1966)は『魔術的芸術』という著作を残している。 国内の近年の現代アート上での展覧会を振り返れば ・2012年:「魔術/美術」展(愛知県美術館 監修:中村史子・中西陽子 ) ・2014年:『The Spiritual World』展(東京都写真美術館 監修:石田哲郎) ・2014年:『スサノヲの到来-いのち、いかり、いのり-展(足利市美術館:他 監修:赤松祐樹) ・2023年:『顕神の夢-幻視の表現者-』展(岡本太郎美術館:他 監修: 鎌田東二) など各展示のフレーミングは少しずつ異なりながらも《不可視の存在》に関して焦点を当てた美術館展示がここ10年で開催されたことを記憶している。 生前の松岡友は絵画、彫刻、インスタレーションの制作、国内外のレジデンスプログラム参加のみならず、ライブペインティングや代価現実ゲーム、多様な内容のアートイベント開催など多種多様に渡っており、また単に「美術作家」と名乗ることはなかった。故にどこか“捉えどころのない存在”と思われていたように思う。 本展は松岡友の遺作の中から完成度の高い作品を厳選し、先行する識者による近代「神霊主義」再考の文脈、言い換えれば“不可視の存在の捉え方“を踏まえながら、鑑賞者に新たに《優れた現代アート作家としての松岡友の再考》を促す展示である。 松岡友追悼展キュレーター平林幸壽(2002年美術学部卒業/仏教現代美術グループS-VA-HA/元:美術作家) |