三宅 一生 氏

本学卒業生(1963年図案卒)・ファッションデザイナー
令和4年8月5日ご逝去。享年84歳。

※メッセージは寄稿順に掲載させていただきました


“三宅一生さんありがとう
三宅一生さんは私より6期下の1963年多摩美術大学、図案科の卒業生です。未だデザイン科の名称が使われていない時代の学生さんです。図案科の授業とは云え、単に平面デザインだけでなく、建築、インテリア、グラフィック、プロダクト等を含むグローバルなデザイン教育が行われていましたので、一生さんもそれらの基盤を広く学ばれたと思います。 ファッション系の学校とは異なった教育基礎を受けられたと思います。その後、ファッションの分野に進まれたので、一般のファッションデザイナーとは異なった教育と視野を持たれたと思います。
一生さんは一般的にファッションデザイナーと呼称されることを嫌い、「自分は衣服デザイナーだ」と云っておられたのが印象に残っています。単に流行の衣服を追い求めるのでなく、時代の中で人間の衣の本質を追求しておられたのだと思います。立体裁断を基本とする西欧の伝統の中に打ち出した着物の持つ平面構成による衣服「一枚の布から」の発想は新鮮なコン セプトで西欧の人達を魅了したと思います。その後、折り紙の発想や他の視覚から衣服のみならず、バックや照明器具に至るまで諸々のデザインをされておられます。
「21−21」 のギャラリーにおける 活動もその展望 のひとつだと思います 。
多摩美TD科の卒業生も多く三宅デザインで働いていますが、三宅デザインの重鎮であられる皆川魔鬼子さんが、ひと時多摩美 TD科の教授として教育に携わってくださったことも得難い時間だったと思っています。
私はニューヨークの近代美術館の中で、現代の諸々のデザイン作品と共に、一生さんの服が展示されているのを見た時、胸が熱くなるのを覚えました。他のデザインと同じレベルで評価されていたのです。
一生さんが追い求めた夢と仕事をたどりながら、続いて下さる後輩の若い皆さんに未来への夢を託したいと思います。”
わたなべひろこ 多摩美術大学名誉教授

“三宅一生さんとは直接の接点はありませんでしたが、服飾研究者として多くのことを学ばせていただきました。 1990年代末のことですが、私がニューヨーク大学の大学院生で、メトロポリタン美術館のインターンをしていた時、 Issey Miyake N Yオフィスから衣裳アシスタン トの依頼があり、アーヴィング・ペンさんによる写真集の撮影のお手伝いをしたことがありました。またニューヨーク大学大学院での修了論文は日本のファッションとカウンターカルチャーがテーマだったため、三宅一生さんの衣服作りと 1960年代以降のファッション史 について考察を深めました。私が現在、多摩美で担当するリベラルアーツ科目「服飾文化論」では、毎年、多くの学生が最も印象に残ったデザイナーとして三宅一生さんを挙げます。その背景には、三宅一生さんが多摩美の先輩であるだけではなく、衣服作りをデザイン領域に位置付け、文化や時代を超えて共感できる「一枚の布」をコンセプトにした衣服づくりの姿勢を若い世代に示してきてくださったからだと思います。ありがとうございます。 ”
深津裕子  多摩美術大学美術学部リベラルアーツセンター教授 多摩美術大学校友会事務局長